サーバントを直訳すると”執事・召使い”と訳します。
リーダーなのに、サーバント?ってどういうこと?と違和感を感じますよね。
執事というのは、主人が仕事に集中できるように、全ての段取りを済ませるコンシェルジュとも呼べる存在です。それを上司-部下関係にあてはめると「万事を尽くして天命を待つ」ということになります。
部下が仕事をしやすいように段取りを済ませたし、指導も十分にして知識も能力もある。本人はやる気に満ち溢れ、どうしたら上手くいくかという道筋も部下には見えている。
もし部下が上記のような状態であれば、安心して仕事を任せられるし、何かトラブルが起きても報連相をしてくれるし、自分は部下に任せて、他のメンバーの指導や別のマネジメントに専念できます。
理想論ですが、全てのチームメンバーが上記の状態になれば、自分は何もマネジメントをすることなく、全ての課題は解決され、より高い目標が達成され、業績はぐんぐんと伸びていきます。
サーバントリーダーシップは日本人の感性に合い、現場力を高める必須のリーダーシップです。
この記事ではサーバントリーダーシップを詳しく解説しています。
この記事でお伝えすること
- サーバントリーダーシップとは何か?
- サーバントリーダーシップのメリット・デメリット
- サーバントリーダーシップの10の特性
是非、最後までご覧ください。
1.サーバントリーダーシップとは
サーバントリーダーシップを日本語に訳すと「奉仕型リーダー」になります。
サーバント(奉仕)型のリーダーとはどのような人か
奉仕と言う言葉を聞くと「部下に優しくする」とか「厳しい事を言わない」というイメージをされる人が多いです。
「確かに今時の子は、厳しくするより、優しくしなければすぐに辞めてしまう」
駄目なことは厳しくいわないといけないし、怒ることも大切です。
サーバントの奉仕とは、相手を甘やかすのではなく、相手の潜在能力を発揮できるように奉仕すると言うことを意味します。
サーバント型リーダーシップにおける奉仕の定義とは
優れた執事は主人に対して、厳しく、愛をもって接します。
- 主人たるもの、自分に厳しく、他人の模範となる存在でなければいけません。
- ご主人様、こういった能力・知識を学んでください。
- ご主人様が動きやすいように、予め、先方に要望をお伝えしておきました。
- ご主人様が、相手にご主人様の考えやビジョンを伝えておきました。
- ご主人様、上手くいかないこともあります。私は常にあなたの味方です。
仕事における主人とは、現場の従業員です。現場の従業員が、勉強熱心になり、責任感を持ち、向上心を持って、自発的に取り組むようになれば、業績は上がります。
サーバント型リーダーのミッション
職場のメンバーが活躍できるように段取りする役割を担うのがサーバント型リーダーです。
- それぞれのメンバーに対して、必要な知識や技能指導を予め施す。
- それぞれのメンバーが連携が出来るように人間関係構築を補助する。
- それぞれのメンバーが作業がスムーズに行くよう段取りを済ませる。
- それぞれのメンバーが悩み・課題を抱えれば、乗り越えられるように励ます。
サーバントリーダーは自分が直接、指示したりすることはしません。
相手に作業に関する知識・能力が十分にあって、周囲とコミュニケーションを取れていて、課題解決の仕方がわかっている。
ここまでお膳立てしてあげれば、必ず成果は出ますよね。
チームメンバーの潜在能力を引き出し、連携が出来るように仲立ちし、やり切るまでサポートし続ける。そんな人がいれば、職場のメンバーは凄く助かりますよね。
これがサーバントリーダーシップが日本でウケル理由です。
サーバントリーダーシップのメリット
業績を上げ続けるためには、”積み重ねのマネジメント”をしていかねばなりません。
”積み重ねのマネジメント”と”その場しのぎのマネジメント”にはどのような違いがあるのか?をご説明します。
サーバントリーダーシップの対義語・反対となるリーダーシップ
サーバントリーダーシップと対極の位置にあるのが、専制(支配)型リーダーシップと呼ばれるパフォーマンスリーダーシップです。
このタイプは直接、指示・指導し、豪腕でチームをリードしていくものですが、メンバーは当然、リーダーの指示に従うイエスマンばかりになっていきます。当然、指示待ちのメンバーも生まれ、リーダーの評価ばかり気にするようになります。リーダーいないときには、手を抜いたり、隠れてサボるメンバーも出てきて、現場に付きっきりになってしまい、事務作業や管理作業が全く取れず、作業に追われているのが中小企業で多く見られる課題です。
その場しのぎのマネジメントではいつまで経ってもメンバーは成長しません。
サーバント型リーダーシップのメリットである”積み重ねのマネジメント”
メンバーの行動をサポートし、必要な知識・能力を身に付け、自分が安心して仕事を任せられるようになれば、その作業・業務に自分は書類作業チェックくらいで済むようになります。じゃあ、次のメンバーを育ててもいいし、放置していた課題に取り組む時間が生まれます。
1つ1つ課題を解消するから、業績が伸びるのであり、毎日の繰り返しから抜け出す事が大切です。
メンバーたちが、勝手に仕事を進め、課題を見つけ、改善案を出し、結果を振り返りながら最適化し、自分はそれに対する許可とアドバイス、サポートをするだけ。
これが全てのリーダーが目指すべき理想のチームの姿です。
詳しく知りたい
理想のチームの状態、チームメンバーがリーダーシップを発揮し合い、連携するシェアドリーダーシップについては、以下の記事で詳しく解説しています。
リーダーとして、マネージャーとして、メンバーの1人として、どういうチーム作りを目指すべきなのかを深く理解できると思うので、当記事とあわせて読んでもらいたい内容となっています。
サーバントリーダーシップのデメリット
サーバントリーダーシップのデメリットとは「時間がかかること」です。
短期的に成果を出すには、メンバーに対して指示・指導したり、現場監督役に徹した方が成果は出やすいです。
「余計な事をするな」、「言われた事だけをやれ」と言った方が、トラブルやミスは少なくなります。しかし、それでは自分が全ての作業進捗を把握し、管理しなければいけなくなり、自分の作業時間に限界が来ます。
しかし、すぐには自分の手を離れません。
やり方や考え方を教えたからといって、すぐに理解なんて出来るはずもなく、同じ事を伝え続け、「なるほど、わかった!」と一皮向ける日を辛抱強く待つことが大事です。
サーバントリーダーシップをやりぬく上でデメリットをまとめると以下になります。
- いつになればわかってくれるんだろう。
- この前も全く同じ事を言った気がするけど・・・。
- 自分でやった方が早いと正直思ってしまう。
上記の葛藤を乗り越えられるかがデメリットであるといえます。もちろん、全てのメンバーにする必要はなく、まず自分が期待するメンバーに対してだけやって、自分の作業負担が減れば、人数を増やしていくというやり方が現実的です。
2.サーバントリーダーシップ10の特性
サーバントリーダーシップは、Spears(スピアーズ)が1998年の論文【サーバントリーダーシップの10の特性】が最も有名です。
その10の特性を噛み砕いてわかりやすく解説します。
①:奉仕の心「相手の成功を心より応援する」
サーバントで最も大事なのが「奉仕の精神」です。
指導やコーチングでは、上司や先輩であれば、どうしても自分のやり方や考え方を押し付けそうになります。相手が自分で答えを見つける、殻を破って成長するためには、相手の思考の延長上でサポートをする事が大切です。
- 今、Aくんが求めているのはこういう言葉だ。
- 今、A君の状況に合うのはこういう話だ。
- 今、A君が身に付けるべき能力は○○だ。
押し付けの指導でよく見られるのは、「それも大切だけど、今必要ではないことだよね」というものです。多くの事を知る、学ぶことはもちろんプラスにはなりますが、物事には順序というものがあります。指導者、サポートする側からしたら「あれもこれも」と善意で教えたくなります。
そうではなくて、今、相手が結果を出す、職場で上手くいくためだけのサポートに集中する。余計な押し付けはしない。
それ奉仕の心の本質です。
②:コミュニティ支援「相手が人間関係を育めるようサポートする」
コミュニティとは仲間の輪です。
人間関係とは1対1の関係で、上司(自分)と部下(相手)、先輩(自分)と後輩(相手)と言った関係です。自分が話しかける、フレンドリーに接するのではなくて、相手が他の同僚や先輩、後輩と中の良い関係や協力関係を育めるようにする事が”コミュニティ支援”です。
- 君の性格とあの人は結構似てるし、仲良くなれると思うよーと紹介してあげる。
- ○○君ってこういう良いところがあるよね、と周囲の人の印象をよくしておく。
- ○○君ってこういう風に見られがちだけど、こういう人だから話しかけてあげて欲しい。
自分以外の人と交流を持てるようにサポートしてあげる。強制ではなくて、自然な流れになるように見せるのが真の意味での気遣いです。
③:傾聴「相手の性格や人柄を理解する・知ろうとする」
ヒアリングとは、自分が問題解決のためにするもの、情報を収集するためにするものです。
ここでの傾聴とは、会話の内容に意味をもとめず、「ただ相手の話を聞く」が目的です。
人は話を聞くよりする方が好きで、相談したり、意見を言ったとき、反論やアドバイスを自分が話している時間より長々とされれば良い気分にはなりません。コーチングやティーチングをするために、傾聴するのではなく「この人とはいっぱい話したい」・「もっと話を聞いて欲しい」と思ってもらうために傾聴をするのです。
自分に対して、あらゆる感情を相談できる、心の底に隠している想いを何でも話してもらえる関係性になる。
これがサーバントにおける傾聴です。
④:共感「正解・不正解ではなく相手の感情を受け入れる」
人との会話で大事なのは「正論や正解」ではありません。
- 君はそういった考えで動いていたんだね。うん、うん。
- なるほど、そういった考えもありだよね。
- 確かに、そういう話なら、その判断になるよね。
上司や先輩の立場なら、部下や後輩が間違った行動や考えをしていたら直さなければいけません。しかし、いきなり正解となる答えを押し付けたり、相手の話の揚げ足や矛盾をつつくのではなく、まず相手の感情や想いを受け止めてあげることが大事です。
相手を良い方向に導いていくのは、傾聴し、共感をした後です。
- この人はいつだって自分の意見を受け入れてくれる。
- この人は自分の一番の理解者だと思う。
- この人は自分の成長を心から願ってくれている。
- だからこの人に説教されたり、怒られたりしてもそれは自分のためなんだろう。
相手を変える上で一番重要なのは、自分との関係性であり、相手が耳を傾ける関係を作れなければ、相手を変えることはできません。
⑤:癒し「あの人と話していると出来そうな気分になる」
新しいことに挑戦すると成功が1割、失敗が9割です。
どんなに能力がある人でも高い目標を目指せば、必ず壁にぶつかり、不安と葛藤を抱えます。
能力の高い・低いに関係なく、成長し続けられる人・成功できる人とは「途中で諦めない・挫折せず努力を継続できる人」です。
そしてそれを乗り越えられるのは自分自身だけで、必要なのは的確なアドバイスではなく、相手が乗り越えられるまで寄り添い、応援し続けてあげることです。どれだけ失敗しても、上手くいかなくても自分だけは相手の成功を信じ続け、味方でい続ける。
それが癒しです。
⑥:説得「あの人は心の底から私の事を信じている」
新しい仕事やより難しい仕事を任されるとき、誰もが「自分には荷が重い」と感じます。
またこれまでの自分の考え方を変えたり、成長する時「自分にはこういった考えしか出来ない」・「自分に出来るイメージが湧かない」と自分の可能性を否定します。そんな時、本人よりもその可能性を信じ続けるのがサーバントリーダーです。
松岡修三さんのように、「君にはできる、君なら出来る、出来るまで応援する、やればできる」と本人が変わるまで説得し続け、実際に行動に移し、へこたれても説得し続ける。挑戦過程で周りから批判されたり、悪い結果になろうとも「君の行動が悪いだけ。行動を修正すれば大丈夫、誰だって失敗はある。大事なのは、変われるか、変われないかだ」と言ったように相手への信頼は崩さない。
そういったスタンスこそが、サーバントにおける説得です。
⑦:成長に関わる「あの人がいてくたから私は変われた」
印象というものは、人から人へ伝染し、拡散していきます。
「あの人は本当に部下想いだ」、「あの人は僕たちの成長を心から願っている」
上記のような噂が広がれば広がるほど「あの人がこういったのは、私のためを思って?」とか「あの人はいつもそういえばこんなことをしてくれている」と記憶がフラッシュバックされます。
人の捉え方というのは印象1つ、解釈1つで変わるものであり、100の言葉を投げかけても相手は1つもそれを真剣にとらないこともあれば、数年前に何気なくした会話をずっと覚えていることだってあります。今、その言葉が相手に伝わらなくとも、あなたの行動の意味を汲み取ってくれなくとも、相手の心にずっと残り、数年後花が開くことだってあります。
大事なのは、今言葉をかけて、すぐに行動に移すことではなく、相手が成長できるまでかかわり続ける事が大切です。
⑧:気づき「こういった事も良いかもしれない」
相手を変えるために、何がいいなんてことは極論存在しません。
これまでに数百人、数千人を指導してきた学校の先生でさえ、「こういった捉え方・感性をする子がいるんだ」と毎年、気付きがあります。これまでに培ってきた接し方というノウハウや知識を活かしつつも、常に相手に当てはめず、「この子はこういう部分に引っかかっているのかもしれない」、「こういった接し方を試してみよう」と日々、気付きを得る事が大切です。
それは業務のサポートも同じで、相手の仕事の仕方や段取りを見て、「この子はこういった手順で作業を進めているから、こういったサポートがこの子にはあっているのかな」といったように日々試行錯誤をする事が大切です。
人とのかかわりに正解というものは存在しません。
⑨:概念化「この子がぶつかっている壁は○○と△△だ」
人間観察や仕事のマネジメントをする上で、概念化スキルというのは非常に重要になります。
概念化スキルとは以下のように思考を概念化することを言います。
この子は、非常に勉強熱心だが、非常に承認欲求が高い。だから失敗して、人からがっかりされたり、期待はずれだと思われることを極端に嫌い、リスクのある行動や根拠が明確でない場合、「とりあえずやってみよう」と絶対にしない。もう少し、肩肘はらずに自由にやって欲しいのだが。 そうはいっても人は変われない。だから、私は君の事を好きだし、勉強熱心で、成長させたいと思っている。だから失敗しても評価はかえないし、周りも君のことに期待していて、もっといろんな事を試して伸び伸びやってくれた方がサポートできると思っていることを伝えよう。周りにも、それとなしに、どれだけ評価しているか、どれだけ自分が失敗して、それから学びを得てきたかを語るようにお願いしよう。 |
上記のように現実を概念化し、抽出するというのは簡単なことではないですが、様々な経営学の本を読婿とで少しずつ出来るようになります。
⑩:先見力「あの人は常に先周りして行動している」
人を導くためには常に一歩先を見ていねばなりません。
- こういうことをしてくれたら、仕事がスムーズに進むのに。
- あの先輩に、こういった事を伝えておいて欲しいなぁ。
- あの後輩に、この業務を任せられないかなぁ。
- こういったルールを作ってくれないかなぁ。
メンバーが仕事をしやすいように段取りするためには、常に1歩先を見ておく必要があります。そうすれば誰かが「相談があるのですけど・・・」といわれたときに「あーそれならやっておいたよ」や「こういったことだよね。こうしようと思うんだけどどう?」といったように先回りして段取りしておくことができれば、誰もが最効率で仕事ができるようになります。
ただ全ての事を先回りすることは出来ないので、常に部下の不満や悩みを聞く時間を持つ事が重要です。
それが段取り力です。
3.サーバントリーダーシップ診断
サーバントリーダーとは簡単にいえば、上司にいて欲しいリーダーです。
話を聞いてくれて、段取りしてくれて、仲介役をしてくれる。
そんな人が上司や先輩であれば、誰もが向上心を持って、仕事熱心になります。なぜなら、今以上に自分が活躍できる、成長できる職場はないからです。
おまけとしてサーバントリーダーシップ診断チェックリストを用意してみました。
あなたはいくつ当てはまるでしょうか?
- 職場で生産性が上がらないのは段取りが悪いからだと思う。
- 段取りを一番出来るのは、全体の作業を把握している人だと思う。
- 仕事を振る時は、まず指導をしてその作業に慣れさせる訓練期間が必要だ。
- その訓練期間で重要なのは、自分でもできるという自信を付けさせることだ。
- 向上心を引き出す上で一番大切なのは、まずは相手の話を聞くことだ。
- 話を聞く上で心がけるのは、相手の意見を否定しない、最後まで聞くことだ。
- 相手が話したい事を全て聞くまで絶対に反論したり、指摘しないことを心がけている。
- 努力の継続が出来ない原因は、途中で自分のやっていることに自信がなくなることだと思う。
- 誰でも付きっきりでサポートしてくれる人がいれば、最後まで努力をやり切れると思う。
- 相手をサポートする上で、大事なのはアドバイスではなく、寄り添ってあげる姿勢だ。
- 相手の成果を高める上で最初にすべきことはチームメートと良好な関係になる事を支援することだ。
- 人間関係で上手くいかない時でも、絶対に自分は見捨てないと思ってもらえる存在に自分はならないといけない。
いくつ当てはまりましたか?
実際にはもっとありますが、ここでは簡易的なものでとどめておきます。サーバントリーダーシップを身につけたい、もっと知りたいというかたむけに本格的な記事を製作予定をしているので楽しみにお待ちください。