リーダーシップ

仕事でリーダーが果たすべき4つの役割とリーダーに必要な12のスキル

あなたは”リーダーとはどのような人がなるべき”だと思いますか?

「能力が高いエースプレイヤーをリーダーとして抜擢すべきでしょうか?」

「多くの仕事内容を知っているベテランをリーダーに昇進させるべきでしょうか?」

これまで日本企業は年功序列に基づき、人事考課で評価が高い人をリーダー(管理職候補)として昇進させるという人事配置を行ってきました。しかし「自分で成果を出すプレイヤー」「チーム全体のパフォーマンスを高めるリーダー」では、全く求められる能力が違い、チームが上手く機能しないという問題が、どのような組織・会社でも起きていました。

「自分が成果を出す」のと「相手に成果を出す」のとでは、必要な能力が変わるからです。そういったこともあって、近年では【総合職としての生き方】と【専門職としての生き方】は別だ。という考え方が少しずつ浸透してきています。

この記事では「チームのパフォーマンスを最大化するためにリーダーが果たすべき役割」「相手に成果を出させるリーダーに必要なスキル」についてお伝えしていきます。

これからリーダーとして会社で昇進していきたい人、リーダー候補を育成したい人、自分にあったキャリアを考えたい人。

誰にとっても有用な内容であると思うので、是非最後までご覧になってみてください。

1.リーダーとして果たすべき4つの役割

ではまずリーダーがなぜチームに必要なのか?、リーダーはチームにどのような役割を果たし、リーダーが機能していないチームではどのような問題が起きてしまうのか?からお伝えしたいと思います。

仕事におけるチームリーダーが果たすべき4つの役割

リーダーが果たすべき役割は、以下の4つに大きく分類することができます。

リーダーの4つの役割

  1. 【指揮】チームの方向性をまとめる。
  2. 【鼓舞】メンバーのモチベーションを高める。
  3. 【育成】チーム全体の能力を高める。
  4. 【解決】チームで発生しているトラブルを解消する。

会議や打ち合わせをすると全員の意見が一致するほうが稀で、誰もが自分なりの経験則と仮説を持って動いています。しかしそれでは足並みが揃わないので、一定のルール・目標・価値観に沿って動いてもらわなければいけません。リーダーといえば【決断をする人】というイメージを持つ人が多いのは、そのためです。ビジョンというと松下幸之助やスティーブン・ジョブスといった人物像を浮かべる人は非常に多いです。

リーダーはチームメンバー間でトラブルが起きれば仲裁に入り、メンバーの要望を聞き、課題を取り除くトラブルシューターです。そして、機械と同様、メンバーを放置しておくとモチベーションが下がっていくので、メンテナンスを定期的にしなければいけません。そして、現状能力を維持するだけでは、より高い目標を達成することは出来ないので、未来のために人材育成という投資を行っていく必要があります。

ここまでをまとめるとリーダーは「未来のためにチームの育成」をしつつ、パフォーマンスが低下しないように「メンバーのモチベーションをメンテナンス」し、「チームの陣頭指揮」をして1つにまとめ、「チームが円滑に動くようトラブルを解決して回る」ということが求められます。

リーダー不在のチームではどのようなことが起きるか?

では次にリーダーが上記の4つの役割を果たしていないチームでは何が起きるかについて考えて見ましょう。

リーダー不在のチームで起きる事

  1. 【個人主義】個人のべき論で仕事が進む。
  2. 【優劣主義】メンバー間で格付けが行われる。
  3. 【短期思考】出来るか・出来ないかが判断の全て。
  4. 【責任思考】誰のせいであるかの犯人探し。

リーダーが機能していないチームでは、メンバーはこれまでに培った成功体験に基づき「こうした方がいい」とか「○○は非効率だ」など、メンバーが好き勝手に行動するので、コントロール不能のチームになってしまいます。

中には成果を出す人もいるでしょうが、結果のみでメンバー間の序列が決まるので、勤続年数や実績の高いメンバーにはリーダーでさえ口出しが出来ず、将来のための行動でも「それで結果が出るの?」という反論を抑える事ができず、短期的な視点でしか判断できないようになります。

そんなチームでは、「結果がすぐに出ない」・「クレームやトラブルが起きた」時には、誰のせいだ、誰の指示だ。という犯人探しが始まります。

たまたま上手く言っているときはいいですけど、少しでも環境や状況が変われば、チームは一気に崩壊し、建て直しは不可能で、会社は赤字に転落、赤字に歯止めがかからず、事業縮小・倒産という流れになってしまいます。

業績に関係なく、良いチームとは「リーダーによるコントロールが効く組織」であり、コントロールできるということは常に状況を変えられる可能性があるということを意味します。今状況が悪くとも、改善さえできる土壌さえあれば、逆境に立っても跳ね返すことは十分に可能です。

2.リーダーとプレーヤーの違い

高い業績を残せば、チームリーダーに抜擢され、そこからマネージャーに昇進していくというのが一般的な流れだと思います。

しかし、プレーヤーとリーダーでは、見るべき視点も習得すべき能力も全く違います。

プレーヤーとリーダーの違いについて正しく知る事が重要です。

プレーヤーからリーダーになる人に必要なパラダイムシフト

プレーヤーとリーダーの一番違いは【自分が成果を出す】のではなくて【相手に成果を出させる力】を求められることです。

プレーヤーであれば、同僚や部下が上手くいっていなくても、自分の成果さえ守っていれば評価はされます。しかしリーダーになるとそうはいきません。特に最初は店長や班長などのプレーイングマネージャーである事が大半であると思うので、自分の作業をしつつ、周りのミスを減らす、生産性・効率性を上げさせることをミッションとして求められると思います。

一番やってはいけないのは「自分がした方が確実だ」・「自分がした方が早い」と思ってしまうことです。

それではメンバーが育ちませんし、自分の仕事が減らないので、リーダーとしてのスキルも伸びません。ずっと作業者であるからです。

リーダーになりたての人は、自分の作業の質は高められても、他人の作業の成果を高める経験はありません。そこで失敗しようが、自分が作業を代わりにするのではなく、その人が成果を出せるように導くということを徹底しなければいけません。その過程で失敗やトラブルの責任を自分が背負わなければならないとしてもです。

「自分ならどうする」という思考から「どうすれば他の人にも出来るか」という思考に”パラダイム・シフト”をしなければいけません。

自分が経験した事のないことでも意思決定をしなければいけない

リーダーになれば「自分の経験した事のない業務」にも口を出さないといけなくなります。

チームの全ての業務を経験してからリーダーになることは稀ですし、社内のマニュアルを参照しながら、あるいは先輩リーダーに相談をしながら、「絶対にこうすれば上手くいく」という確信がない状態でチームの意思決定をしなければいけないのがリーダーです。

プレーヤーであれば、これまでに積み重ねた経験や知識、ノウハウという絶対的な根拠をもって、自分なりの意見を言う事が出来ました。しかし役職が上になればなるほど、予測や分析という数値を使いながら”仮説”で意思決定をしなければいけなくなります。

すると当然「もしこうなればどうするんだ」とか「こういうことも考えられるが?」という現場の反発も受けますし、それを押し切り、「こういう方向性でいくことに決めた。協力してほしい。」という半ばお願いという形で進めないといけない場合も生じてきます。

そういう場面に出くわして初めて「自分にもっと人望があれば」というこれまでの自分のチームでの立ち回りを後悔します。

リーダーは常に専門分野外の意思決定をしなければいけないというシーンをイメージしておく必要があります。

他人は自分とは違う理屈で動いていることを知っておかないといけない

リーダーがどれだけ正しい意思決定(指示や指導)をしたとしても、相手がその通りに動くとは限りません。

なぜなら、相手は自分とは違う理屈(価値観や思想)で動いているからです。

人は自分が経験してきたこと以上の想像はできません。特に後輩や部下は、あなたが経験してきたことを経験していないことが多く、あなたの思う当たり前は通じません。だからこそ、目の前の相手に対して「この人は今どういうことを考えていて、どういうことを褒めてほしくて、どういう声かけをすればいいのか」という相手心理を考える事が重要になってきます。

自分のロジックではなくて、相手のロジックから入り、そこから自分の動いてほしい方向に誘導する意識を持つ事が大事です。

「この人はこう考えているから、こういう風に話しかければ、接すれば、この人はこういう判断をするはずだ」

上記のようなコミュニケーションが”モチベーション・マネジメント”の本質であるといえます。

自分の部下や後輩は絶対に自分とは同じ視点では考えてくれない

人は自分を理解してほしいと思う生き物ですが、そんなことは起こりえません。

「立場が人を作る。」という言葉はまさにその通りで、リーダーになって初めて仕事を見る視点が広がります。リーダーになって「先輩や上司はこんなことまで考えていたのか」という事が初めて見えてきます。

なぜなら部下や後輩は「そこを考えるのはリーダーの仕事」と無意識に考えているからです。

だからこそリーダーはべき論で考えるべきではないし、チームメンバーが自分の意図を汲み取って動いてくれるなんて都合の良い事を考えてはいけません。

自分が積極的にコミュニケーションを取って、部下や後輩・チームメンバーを意図を持って誘導しなければ、チームは変わりません。

リーダーである以上、受身ではなく主体的に行動しなければ、状況は好転しないという意識を常に持つことが求められます。

3.リーダーに求められる12のスキル

ここまでで「リーダーがどれほど過酷で、自分にできるのか」と思われた方もいるかもしれません。

しかし安心してください。思考を少し変えるだけで難易度はグッと下がります。人間1人で出来ることには限りがあるので、上手く周りを使うことを覚えることこそがリーダーになる上で一番重要な要素になります。

最後にリーダーに求められる12のスキルについてお伝えしたいと思います。

リーダーとして動ける時間を捻出する”人材育成力”

リーダーになれば自分の日常業務に加え、チームマネジメント業務を付与されます。

そのままにしておくと自分の仕事は増える一方なので、自分がこれまでにしていた業務や役割を信じられる後輩に任せていかなければいけません。これがリーダーとしての第一の壁です。能力がある人ほど業務負荷が増えていくので、上手く周りを頼る事が出来なければ業務量に押しつぶされます。

自分にしか出来ない仕事・役割といえば聞こえはいいですが、裏を返せば、どんなに忙しくても自分以外の人ができない状況を作ってしまっているともいえます。

そんな状況で、チームを改革・改善することなんてできないので「自分がこれまでになっていた業務・役割を安心して任せられる後輩・部下を作る。」という事がリーダーになるためのファーストステップであるといえます。

自分が思い描くことを100%伝える”共感力”

チームメンバーに自分と同じように考え、行動してもらうようになってもらうためには、”自分をわかってもらう前”に”相手を知る必要”があります。

上司や先輩からすれば「1から10まで言わないとわからないのか」だとか「まずは自分で考えてから聞いてくれよ」と思うかもしれませんが、人は自分にとって好ましい人にしか恩や義理を感じません。先輩や上司というのは職場が一緒なだけの口うるさい人にしか過ぎないのです。

そのためまずは【自分が相手の「悩んでいること」・「努力していること」についてよく知ろう。】とする事が大切です。

これが【「ヒアリング(傾聴)力」・「共感(承認)力」を鍛えましょう。】といわれる理由で、上司や先輩が自分に歩み寄ってくれ、普段から相談事や雑談が出来る関係性であれば、部下や後輩に強制なんてしなくとも、自分に評価されたい・役に立ちたいと思います。

そういう関係性を作ることができてさえいれば、自分の指示や指導、提示する目標に熱心に耳を傾け、それをやり遂げようとするはずです。

部下や後輩を理解しようとリーダーがしないのに、リーダーの事を理解しようと思うはずがありません。

正解が見えない状況で決断を下す”意思決定力”

仕事で「絶対にこうすれば上手くいく」という確証を持って決断できる状況というのは非常に稀です。

自分がリーダーとして不慣れな状況であったり、必要な情報が揃っていないのに今すぐに指示を出す必要に迫られるなど、「多分、これが最適解なはずだ」という自分の主観で物事を決断を迫られます。会議や打ち合わせでも、誰の意見にも一理があり、優劣をつけられない選択肢の中から1つを選ばないといけないという状況もあるかもしれません。

見通しを持って仕事をして、事前に情報収集やチームの進捗をきちんと把握し、「情報が揃っていない状況で意思決定のシーンを迎えるなんて状況にそもそもしない。」という事が最適解ですが、「自分の決断についてきてくれ」とメンバーに対して「はったり」をかまさないといけない時が出てきます。

「決断を下さない」というのは、「状況を更に悪化するリスクを許容する」という意思決定を下すことと同義なので、決断を先送りにするのも1つの意思決定の形であるともいえます。災害時の対応で、公共機関や政府・市の対応の遅さに批判が集まるのはそのためです。

どんな意思決定をしても批判が集まる状況であるのならば、思い切って即決で自分の感覚を信じるというのもリーダーに必要なスキルです。

自分と相手の理解のギャップを埋める”コミュニケーション力”

コミュニケーションというのはただ”指示・指導をする””関係性を深める”だけのものではなく、自分と相手の価値観や目標のギャップを知るための”観察・分析ツール”としても機能します。

仕事の雑談をしていると必ず「私ならこうしたのに」とか「こんなことがあってさー」などの愚痴を聞く機会が増えます。

その会話の中で「○○があって、△△が不満だった」とか「○○ではなく、△△にすべき」とか現実と理想のギャップを愚痴として表出化されます。そういう何気ない会話から、「この人はこういう優先順位で動いているんだな」だとか「仕事においてこういう理解をしているのか」とか、「この行動に対して、こういう評価を下しているのか」という自分との考え方のズレを理解することができます。

そこでズレが大きい場合には、「少し落ち着いて話せる時間をとれる?」と仕事中に時間を割いたり、「懇親会を開いて自分の考えを面白おかしく伝える機会を増やす。」という手が有効になります。飲み会なんてものは後輩や部下、アルバイトたちが主役で、楽しむために先輩や上司が奉仕して、飲み会が始まれば隅っこでちびちびと手酌で存在感を出さずに飲むべきだと思っています。

そうして楽しくなって気の大きくなった若い子達が持論をぶつけ合っている姿を見て、「こう考えているのかー。明日以降で○○くんと△△さんとのコミュニケーションを増やしていこう。」と今後の動きについて考える情報収集の場としています。酒の力を借りれば、建前ではなく本音を引き出すことが出来るので、上手く使うことが出来れば飲みニケーションはすごく有効だと感じています。

相手に自分もそう思うというイエスを積み重ねる”ビジョン力”

目標や優先順位などの”ビジョン”は伝えるだけでは全く意味がありません。

人は押し付けられれば、必ず反発したり、反論のための粗探しをしようとする生き物であるからです。

営業マンのテクニックに”イエス(同意)を積み重ねていく”というものがあります。

「Aをする際に○○はとても大事だと思わない?」・「それは○○の際に□□が重要だと思うからだよね?」・「じゃあ○○の数値が△△をする上で何よりも重要な指標と思わない?」、「だから僕は本年度は○○を△△にする目標を立てているんだ。どう思う?」

上記のように簡単に質問から入っていき、相手の思考を上手く誘導することが出来れば、「私が与えた目標」ではなく「自分が思いついた目標」になります。

もちろんそんな簡単にはいかないので、上手くその話を差し込める会話のタイミングを逃がさず、数ヶ月を掛けてじっくりと会話の中に仕込んでいく必要があるのですが、上記を頭の隅において日常会話をするのとしないのでは、将来的に大きな差が生まれます。

ビジョンというのは与えるものではなく、共有するものであり、自分が描くビジョンをどうすれば、相手にたどりつかせるようにできるのか。そのためには、どんな質問をして、どういう思考をさせ、どういう情報を与えていくべきなのか。

些細な日常会話であっても、常に意図を持って話す習慣を付ける事が大切です。

瞬間ではなく継続のマネジメントへと変える”モチベート力”

ダイエットとかでもそうですが、1時間・1日という単位であれば、誰もがある程度の努力は出来ます。

経営に関する本を読んだその日であったり、上司や先輩から褒められた瞬間であったり、研修を受けた日であれば、誰もが「これからこうしていくぞ!!」という熱意に駆られます。

しかし「家に帰って寝る。」「土日を挟んで次の週になる。」「1ヶ月くらい経過する。」と次第にそのモチベーションは薄れ、知らない内にその日に決めたルールや想いはすっかり忘れ去られてしまいます。

それほどやる気を持続させる。決めたルールを遵守し続けるということは難しいことなのです。

だからこそ、部下や後輩のモチベーションを保ち続けるために、「褒める(評価する)」・「数値を振り返る」・「反省会をする」・「目標を設定しなおす」という定期メンテナンスが必要になります。

1ヶ月に1回必ず上司との1ON1ミーティングをするという会社や業績指標を一緒に分析する機会を持つ会社では、社員の意欲が高いのはそのためで、僕の場合であれば、常に部下や後輩のモチベーションに気を配り、モチベーションが下がってきたなぁと思えば働きかけをするようにしています。

向上心を持つ人はいますけど、そんな人は稀で、職場にいればラッキーぐらいの気持ちでいたほうがいいです。

基本的に人のモチベーションは働きかけをしなければ低下すると考えておきましょう。

チームメンバがスムーズに仕事を進めるための”問題解決力”

日常業務をしていても、何事も問題なく仕事を進むなんてことはなく、チーム内でのコンフリクトや予想もしないトラブル、顧客からのクレーム、設定した目標に届かない。なんてことがおきます。

これがプレーヤーであれば自分の業務の範疇だけで済みますが、リーダーとなると「課題を特定できない。」・「どうすれば解決できるかイメージできない」という問題が出てくることもあるでしょう。

しかしリーダーに答えが見えていなくても、メンバーの誰かが解決できればOKです。

利害関係調整したり、解決できそうなメンバーの支援をしたりすることがリーダーの仕事です。リーダーの問題解決力とは、チームが問題を解決するための段取りをすることであり、問題解決のための担当者を割り当て、そのメンバーに最大源の支援・解決環境を用意することです。

「自分はよくわからない専門外の分野ではあるが、メンバーを信頼し、任せる。」これを怖いと思うのか、知らないことも上手くマネジメントできる力を身につけようと思うのか。

自分では解決できないことも、上手くチームをリードして解決に導く力を身に付けるという意識をもてるかどうかが「良いリーダーになれるかどうかの一番の壁」であるともいえます。

建設的な議論をできるように導く”コンフリクトマネジメント力”

ワンマンチームではなく、メンバー全員が長所を伸ばし、個性を発揮し合えるようにすれば、立場や能力の違いによって、意見の対立(コンフリクト)が起きます。

そのコンフリクトがおきたとき、メンバーたちはリーダーとは違い、チーム(職場・部署)単位での視点を持っていないので「あの人は嫌い」だとか「あの人とは考えが合わない」という相性問題が表面化します。

特に日本人はディスカッションが苦手で反論をされれば、「攻撃されている」と感じ、過剰防衛・回避を行い、議論を避ける傾向があるので、リーダーは「あの人はあなたを認めているからこそ、本音で話してくれているんだよ」・「あの意見は採用しなかったけど、話し合いを盛り上げるきっかけになったよね。これからも頼むよ。」など、積極性を評価する姿勢を見せる事が重要になります。

対立なんてあって当然だ。反論されない意見なんてない。意見を言わない人の方が罪である。

上記のように「意見の対立を避ける」という認識を破壊する事がリーダーの重要な役割の1つです。

チームが間違った方向に進まないための”リスクマネジメント力”

ここまでリーダーの仕事とは、「自分が活躍する」のではなく「メンバーに活躍させる」ことであるとお伝えしてきましたが、線引きは必要です。

メンバーの主体性は、一定のルール・行動基準の下で発揮させるものでないといけません。統一された目標・ルール(マニュアル)・優先順位・行動基準の下でなされるものでないといけないからです。

そのためには「これ以上はだめだ」と感じれば、メンバーに指摘したり、叱る必要がありますし、「これ以上のリスクは許容できない」というラインを超える意見を採用してはいけません。それはメンバーに与える裁量権も同じで、「ここまでは自由にしていいが、この決定権や業務は自分が握っておかないといけない。コントロールしておかないといけない」という線引きはする必要があります。

どこまでを許容し、どこから先は自分がコントロールするのか。

この線引きが出来れば、リーダーとして大きな失敗することはほとんどなくなります。

自分のこれまでの成功体験や判断を変えることの出来る”柔軟性”

成功と失敗の境目というのは非常に曖昧なものです。なぜなら環境という要素に影響を受けるからです。

「ある状況で上手くいっていたことが、人員や環境が変化し、上手くいかなくなる。」というのはよくあることであり、チームが結果を出し、上手くいっているときこそ、チームメンバーの報告を怠らず、常にデータをチェックし、見落としがないか・自分の見通しが変わる兆候を見落としていないかに気を配り続ける意識を持つ事がリーダーに求められます。

「業績というのは、水ものであり、風が変わればすぐに変化するものだ。」という意識さえあれば、自らが積み上げてきた成功体験に引きずられずに、数値を見て常に客観的・中立的な視点で指示や与える目標を状況に合わせて調整できるようになります。

チームを鼓舞するために目の前の成果に対して、一緒に喜ぶことはもちろん大切です。しかし、成功・失敗に関係なく、リーダーは常に一歩引いた立場から「このまま上手くいき続けるのかどうか」・「次のステージに行くためには施策を大きく変更する必要があるのではないか」を考え続ける習慣を持つ事が大切です。

自分の指示がなくとも仕事が成立する”チームビルディング能力”

リーダーの究極的な目標とは、「自分の指示や指導、サポートがなくても業績が伸び続けるチームを作り上げること」です。

指示や指導、サポートというものは、必要だからするものであって、自分の期待する通りにメンバーが動いていれば、指示や指導、サポートを必要とはしません。自分とは違う優先順位で動く、要求水準に満たないスピードや質で仕事をしているから指示や指導が必要になります。メンバー間で溝が出来たり、連携が上手く取れないから段取りをしたり、仲裁に入る必要があります。

しかし、メンバーが上手く意思疎通をし、自分と同じ判断をし、同じクオリティで作業ができるようになれば、リーダーが日常業務に全く関与しなくても、良い結果が出るようになります。

そのような理想のチームをビルドすることこそが、リーダーの究極的な目標であるといえます。

志半ばで倒れないために必要な”自己管理能力”

社長は孤独という言葉があるように、リーダーというのはメンバーから理解されない立場にあります。

なぜなら世界を見る視点が違うからです。チームのために、時にはあるメンバーに我慢してもらう必要があるでしょうし、全体的な観点から部分的には面白いアイデアを却下しなければいけないときもあるでしょう。

「こちらを立てればあちらが立たず。」といったように、常にメンバーの感情に気を配る必要がありますし、チーム育成途中でメンバーがダウンしたり、抜けたりすると自分の時間を割いてフォローに入らないといけません。

チームリーダーになったばかりの頃は、肉体的・精神的にかなりのハードワークになります。

そこで大事なのが、「上手く休める時間を作る」・「頑張っても時間的・物理的にどうしようもないことは無理。」と割り切る。・「上手くストレス発散する。」という自己管理を学ぶことです。

「能力が高くても繊細な人はつぶれてしまう。」ということはよくあるので、仕事をするための体力を鍛える・体力管理を学ぶということもまた、リーダーにとって必要なスキルの1つになります。

まとめ

ここまでで自分のパフォーマンスだけを考えればいい”プレーヤー”とは違って、”リーダー”はいかに大変で、これまでに学んできたことのないスキルを習得し、役割を発揮していかなければならない。という事をご理解してもらえたのではないでしょうか?

しかし、リーダーがずっと忙しいというわけではありません。

リーダーが忙しいのは、チームリーダーになって間もない頃だけです。半年から1年くらいたつころには、人間関係の構築、目標などのビジョンの共有、人材育成などのチームビルディングが終わります。

上記を乗り切れれば、後は別に指示や指導がなくてもチームは勝手に回るので、突発的なトラブルのフォローをするだけで済むようになります。そうなれば、新しい施策や改善案、分析をする時間が作れるので、本腰をすえて取り組み、リーダーになって3年くらいで目に見える成果を出せるようになります。

別にリーダーになったからといって、全てを1人でする必要はありませんし、すぐに全ての役割を果たさないといけないというわけでもありません。

チームの味方を増やすところからはじめ、安心して仕事や役割を任せられるメンバーを育て、自分がマネジメントをするための時間を作り上げる。時間に余裕が出来れば、初めて改善に取り組み、メンバーに協力してもらいながら目標に向けて一致団結する。

上記のようにチームの成長ストーリーに沿って、必要な努力をしていくことがリーダーに求められる役割です。

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