現場力とは日本が世界に誇る力の1つであり、日本人が無意識に持っている当たり前の感覚の1つです。
「こうした方が早くない?」、「こうするためにこうしよう」、「これもした方がいいのでは?」
上記のようにたとえアルバイトでもお店のために、売上やコストを削減するために貢献しようとする人は非常に多いです。
社畜という言葉で皮肉されるほど、日本人は学校でも、スポーツでも、ビジネスでも団体行動を重視するのが日本人です。ただ近年、個性と権利というのがネットで過剰に強調され、その強みはなくなりつつあります。もちろん、会社に対する貢献を当たり前と捉えず、報酬という見える形で報いる必要はありますが、この記事では「現場力を高めるために貢献する人材の5つの特徴」に焦点を当てて解説します。
この記事でお伝えすること
- 現場対応力とは何か?
- 現場力の高い職場の特徴
- 現場力を高めることのできる人の5つの力
- 現場力を高めるための方法
是非最後までご覧になってみてください。
1.現場力とは
現場で求められるのは、新しいやり方を考える力でも、こうした方がいいのでは?というそもそも論でもありません。
最も効率的なやり方で、ミスなく、高品質な作業を遂行することです。
目標が正しいかどうかは経営層が決めることであり、現場がそれに介入してしまえば、組織はぐちゃぐちゃになります。あくまで、与えられたミッションを遂行するために今のやり方を洗練させる改良・改善です。
特に若い人たちは、「こうあるべきだ」とか「こうでなければならない」という理想論・べき論を抱える人が多く、「それなら自分で起業すれば?」となってしまう人が多いです。あくまで自分は組織人であり、歯車の1つです。
ただ歯車であっても欠けることの出来ないコアパーツになることはできます。
「指示に従うだけのロボットでもなく、組織の輪を乱さない、能動的でありつつも、チームの事を最優先で考えられる人材のあり方」をご紹介していきます。
強い現場力とはどのような状態の事をいうのか
会社のルール、マニュアルというのは、あくまで「この手順でやれば失敗はしない、ある程度のクオリティで出来るガイドライン」に過ぎません。
会社からすれば、100人の従業員がいれば、100人全員がある程度こなせるように、現場オペレーションを作らなければいけません。するとできる人からすれば窮屈に感じたり、面倒に感じることも当然あります。でもそれは「できる人から見れば」の話で、「じゃあ好きにやってください」となれば会社の9割の人が困ることになります。
「自分がいいと思うやり方でやる。」というのはプロだからできることであって、そうしてしまえばほとんどの人ができないことになります。
これが職人やベテラン社員ばかりの中小企業で新入社員が定着しにくい理由でもあります。
「見て覚えろ」というのは能力の高い・向上心のある人であればできますが、それ以外の人には向いていない現場管理方法であるといえます。
現場対応力が高い職場の特徴
そういった意味で現場力が高い職場というのは、職場メンバー全員に知識があり、能力が高い職場というわけではありません。
現場力が高い職場というのは、会社のルールやマニュアルに込められている意味や意図を深く理解し、その枠から離れない範囲でよりやりやすいように改良できるチームであるといえます。
例で言うと飲食店でエリアマネージャーがきたとします。
その時に、Aマネージャーが求めているのはこういうことですよね?なので、こういうやり方をしていますが大丈夫ですか?と店長は言います。するとマネージャーからすれば「こいつわかっているな。自分の考えを十分理解している。」となります。今後、自分の判断を待たずに改善しても良い許可をマネージャーは出すことになります。なぜなら、この店長を好きに動かしても自分の意図に外れる独断専行でトラブルを起こさないだろう、という信頼があるからです。
現場対応力を高めるためにどのような人材を育成しなければいけないか
会社にはカラーがあり、コンセプトがあります。
いくら良かれという思いで行動をしたとしても独断で動かれれば、上司や先輩はかばえきれなくなるし、それを認めてしまえば、次々に好き勝手な行動を許すことになり、部下や後輩のコントロールが出来ない状況になってしまいます。
しかし、業務マニュアルやルールを現場でのあらゆる状況に対応できるレベルに作りこむことはできません。最後は現場の自己判断に任せるしかありません。事後報告をどこまで認めるかが現場管理で最も難しい課題になります。
現場対応力の育成が難しい理由には、受身ではないけど、暴走しない、自発性がありつつも、上司に忠実な矛盾する2つの能力を併せ持つ人材を育成しなければいけないというところにあります。
2.現場力を向上させるために必要な5つの力
日本企業が世界に誇る現場対応力の高い「現場改善」と「現場改良」とは5つの能力を持っている人材であるといえます。
現場対応力の5つの力
- 状況に応じて指示・指導の使い分け
- 説明・共有の徹底
- 事前指導
- 相談指導
- 報告指導
詳しく説明します。
現場対応力①:状況に応じた指示・指導の使い分け
現場では時間十分に時間が取れるとき、迅速に対応しなければいけない時、作業に追われているときなど、状況は様々です。
状況によっては、指示の根拠を説明している余裕なんてなく「とりあえずいいから指示に従え」・「理解できなくてもいいから言われたとおりにやれ」といわなくてはならない場合もあります。
時間が十分にある時は丁寧に説明・指導をしつつ、状況によっては豪腕で現場を支配し、コントロールする。状況に応じた使い分けが大切です。
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現場で状況に合わせて柔軟かつ迅速に対応するためには、根拠や理屈抜きに自分の指示に絶対の信頼を周囲に持ってもらわないといけません。そしてそれは単なる能力や知識ではなく、自分という人間に対する信頼関係を周囲の先輩や同僚、上司と結んでおく必要があります。
どれほど能力があろうが、この人は信用できない、気に食わないという感情を周囲が持っていたとしたら、いくら正しく、合理的な指示や判断をしたとしても周囲はついてきません。
以下の記事では、周囲の人間と良好な人間関係を作り、要領よく成果を出せる人の特徴について解説しています。
現場対応力②:事後の説明・共有の徹底
いくら忙しいといっても、指示を出しっぱなしと言うのは絶対にしてはいけないことです。
人間は理解が出来ないことに対して不快感を持つ生き物であるからです。それ放置すると次から指示に従ってくれなくなるかもしれませんし、「あの人は理不尽だ。」とか「あの人は自分勝手だ」という愚痴や不満を陰でする人が増え、職場で孤立することにつながるリスクも高まります。
作業が一段落したら必ず「さっきは○○の理由で、指示をしてしまったけど、それはこういう理由からなんだ。迅速に対応しなければこうなるリスクもあって、申し訳ないと思いながら、そうしてしまった。」と相手が「全然大丈夫ですよ!そうだったんですね!」という返しをするように納得させる事が大切です。
すると次から「この人がこうする時は必ず理由がある。従おう。」と思ってもらえるようになります。
現場対応力③:未来の指示から逆算した事前指導
指示というのは手札であり、事前にどれだけ準備できるかで取れる選択肢は変化します。
- 動かせるのはあの人だけど、この指示をこなせる技量があの人にはない。。
- あの人をこう動かすために事前に指導をしておけばよかった。
どんな指示を出せるかは、相手の技量によって出せる指示は限られ、事前に人員状況や作業スケジュールを予測して「あの人をこう動かすにはこの指導を事前にしておく必要がある」、「こう動かすためにこの業務を前もって経験させておこう」といったような事前準備が非常に大切です。
忙しい時よりも大切なのは、暇な時間にどれだけ未来のために備える事が出来るかです。忙しくなって指導することは出来ません。作業をこなすことで一杯になり、業務時間を削って教えている余裕なんてないからです。
いざ、その場になって「あの人にこれが出来るように教えておけば良かった」とならないように、どれだけ事前に前もって準備できるかという段取りが現場の成果を決めます。
現場対応力④:相談指導の徹底によるコントロール
あなたは職場の誰に対しても相談が出来るでしょうか?
- 本当はこれを聞きたいけど、相手に「○○と思われる」と勝手に想像してできないことがある。
- 相手が忙しそうにしていると声がかけられない時がある。
- 相談できる人は限られてくるので、相談できる人が近くにいなくてできないときがある。
相談ができないのは、部下や後輩に原因があるのではなく、ほとんどが上司や先輩に原因があることがほとんどです。
- 相談した時、嫌な顔をされた。
- 相談した時、後にしてといわれた。
- 相談した時、自分で少しは考えろといわれた。
そうな対応をされたら次から出来ると思いますか?
もちろん同じことを何度も質問する、自分で考える気がない。そういった問題社員はいます。
でもそんな人、職場に1人か2人かいるくらいの例外で、実際にはレアケースです。
上司が責任者、先輩が変われば急に生き生きするようになった。ほとんどがそういった事例です。
現場対応力⑤:報告の徹底
報告も同じで、ほとんどの社員は「どの話なら報告すべきで、どの話なら報告するまでもないことなのかがさっぱりわからないからしない」のです。
あなたのチームでは報告指導を以下のような段階を意識してしていますか?
- まず報告をする事を癖づけるために些細なことでも報告しなければ怒る。
- どんなしょうもない報告でも嫌がらず、よくやったと褒める。
- 報告を当たり前に出来るようになったメンバーには、報告しなくて良い事を教えていく。
基本的に「報告すべき・報告するまでもない」という情報の取捨選択は経験によってしか磨かれません。
にもかかわらず「忙しいのに、そんなこといちいち報告するな」といわれれば怒られるしやめておこうとなります。
上司や先輩の都合よく、必要な情報だけを報告しろなんて事を求める方が理不尽な話です。
3.現場力を高めるためには
現場力を高めるには、訓練を積み重ねる以外に向上させる方法はありません。
しかし、ビジネスではスポーツのように「練習と試合」の区別がありません。
毎日が試合であり本番です。
だから毎日が今の焼き直しになってしまい、いつまで経っても今日がひたすら繰り返されてしまうのです。
現場力を強化するには
現場力を高めるために日本企業では様々な取り組みがされてきました。
その代表的なものを2つ紹介します。
現場力を強化するための事例①:交流会
1つは、「飲み会」などでの交流会です。
- 僕はこういうやり方をしているけど、君はどうしてるの?
- 君には僕は結構期待していて、こういったことを君なら出来ると思う。
一番やってはいけない飲み会は説教です。上司や先輩からグダグダと話をされたら「次から絶対にいかない」となります。
飲み会とは部下や後輩のためにあり、「下のものに楽しんでもらおう」というサービス精神を発揮したり、「普段は厳しくしているのは、君に期待しているからなんだよ」とか「怒ったりしているけど、それは仕事であるからで、君の事が嫌いだとかじゃないから誤解しないでね」と「飲み会楽しいです!」という感情を持ってもらう事が大事です。
そうした気分にさせることで同僚や後輩同士で意見交換をさせ、やる気になってもらい、「この人の指示や指導には愛があるんだ」と「この人には付いていきたい」と思ってもらえるようにする事が大切です。
「この人の指示や指導なら受け入れられる」という気持ちにするために飲みニケーションがあります。
現場力を強化するための事例②:プレゼン大会
「よく会社の利益や業績に貢献しろ」といいますが、もしそんな意識があるなら、フリーランスや起業をしています。それができないから「サラリーマンでいいや」となるわけです。給料を払わないくせに貢献だけを求めても人は付いてきません。
貢献意識は強制的持たせることはできません。
職場全体、チーム全体への帰属意識・貢献意識を高めるために、プレゼン大会というものが存在します。
- 良いプレゼンをすれば賞金が出る、昇給につながる。
- プレゼンで上位入賞をするには、数値による裏づけが必要。
- プレゼン資料を作るときに、初めて数値に興味が出る。
- 上司たちはこういった数値を見ていたのか、こう考えていたのかという理解につながる
上司や先輩から意識しない数値目標を与えるのではなく、数値を使う機会を経験させる方がずっと多くの気付きを与えられます。
現場改善力を向上させるために大切なこと
「結果の8割は勝負する前から決まっている。」という言葉があります。
ここまでご説明してきたように「事前にどれだけの準備をしてきたか?」が何よりも重要で、そのためには作業時間だけでなく、日々の作業ノルマをこなしながら、メンバーのスキルアップ、効率化のための時間を捻出する事が何よりも重要です。
忙しい、時間がない。できる人がいない。自分でないと対応できない。
日々をこなすだけの日々では未来はありません。
そしてただ作業をするだけが準備ではありません。
上司への根回し、後輩との関係性など、未来の手札を増やすための準備は様々なものが存在します。
未来に自分はどういう手札をきるのか?その手札を切るために今どういう準備をしておくべきなのか?
その時になって「この手札を切りたいのに切れない」あるいは「この手札があればよかった」とならないように、未来を意識する事が大切です。