チーム・職場を1つにまとめるには、全員が同じ目標・考え方を共有する事が必要で、同じ目標や作業をしていても、自分なりのやり方や優先順位、大切にしている考え方は違います。
チームがバラバラになってしまうのは、やる気がない・能力がない・個人プレーに走っているのが原因ではありません。「こうした方が効率がいい」・「こちらの方が成果が出せる」といった考え方の違いこそが本当の原因です。
司会役が得意、ビジョンがある・周囲を巻き込む力のある人というのは、相手から賛同を得る・共感を得る能力が優れています。
周囲の人の考え方や思考に感化し、巻き込む力を”変革型リーダーシップ”といいます。当記事では、変革型リーダーについてわかりやすく解説します。
バラバラのチームをまとめるには?
ではまず「チームをまとめるとはどういうことなのか?」について改めて考えて見ましょう。
まとまりのあるチームとはどのようなチームか?
最高のチームを表す言葉として、「アイコンタクト」や「阿吽の呼吸」というものがあります。この言葉の指す意味は「相手が自分に求めていること」や「相手が頭で思い浮かべている事が全てわかる」ということです。
かみ合っていないチームでは、「それは指示されていない」、「そこまで説明してくれないとわからない」とか「その言葉だけでそこまでは読み取れない」など、コミュニケーションミスが発生しています。
しかし、全ての事を説明することなんてできないし、「そこは会話の中から読み取ってくれよ」と感じた経験は誰にでもあることです。
チームをまとめることの本質はチームメンバーに自分がイメージしていることを理解してもらうことにあります。それができれば、相手との連携は上手くいくし、ミスリードや誤解、対立は起きず、協力して1つの作業に最効率で取り組む事が出来るようになります。
チームをまとめる方法・チームのまとめ方のポイント
しかしそう上手くはいきません。誰もが自分の考えを持って行動しているからです。
それが先輩や上司からの指示・指導であったとしても「それは非効率だ」・「それをする意味がわからない」など、心の中で思うことは誰でもあり、「それをしても意味はないと思う、あるいは無理だ」と感じた場合、全力でそれに取り組もうと思える人はいません。
会議で決まったこと。新しいルールや目標。マニュアルや作業手順の変更。
「それらに取り組むことで自分にとってメリットがある」と思うから人は指示や指導、決まったことに対して努力するのです。
つまり、人を動かし、チームを1つにまとめるには、「メンバーの賛同や納得を得る事が必要不可欠である。」ということです。
優れた司会役・まとめ役の人物例
司会が上手い、職場のまとめ役を上手くできている人は、周囲の賛同を得る話術に長けています。
賛同や説得というのは破壊と創造の2つが必要になります。
話を聞く前は、その人の考えや今までのやり方という経験・伝統・固定観念があり、それらこれまで教えられたとおり、良かれと思ってやってきたことに疑問を抱かせ、その考えを破壊します。その上で自分の考えを魅力的にプレゼンし、「そちらの方がいいね」と思ってもらえたとき、説得・賛同が成り立ちます。
演説や交渉など、自分の考えを通すことが上手い人というのは、自分の考えを論理的に伝えるのではなく、まず相手の今までの考え方を聞き、それに対する疑問を抱かせ、新しい考えに塗り替える。ということに長けているといえます。
その相手の思考を塗り替える力が変革型リーダーシップです。
変革型リーダーシップとは?
変革型リーダーシップは論文では”トランスフォーメショナル・リーダーシップ(transformational-leadership)”といい、ビジョン型リーダーシップと翻訳されることもあります。
変革というと非日常業務をどうしてもイメージしがちですが、本来の意味は思考変化【パラダイム・シフト】を引き起こすことにあります。
作業の優先順位や業務手順、新しいルールに取り組む。ということは全て今までのやり方ではなく、新しいやり方に変えることであり、この力は日常業務でも必要になる力です。
変革型リーダーシップの人物像:歴史上の偉人
変革型リーダーシップの人物像として有名なのは、松下幸之助、スティーブン・ジョブス、歴史上では織田信長があげられますよね。
最近であれば、ドナルド・トランプさんとか、有志貴人として有名なひろゆきさん、堀江さんとかがイメージしてもらえばOKです。
共通点としては、演説が上手い。一般常識が間違っていると認識させられる。独自の路線を貫く。キャラクターが強烈。などが上げられます。
賛否両論はあると思いますが、話を聞いていて「自分もそう思う!」と感化される人が多いのも事実です。
変革型リーダーシップは現場にこそ求められるスキル
上記の人物像をイメージすると経営者や政治家、タレントに求められる力と思われるかもしれませんが、実際は現場の人間にこそ求められる力です。
マニュアルやルールの変更。今月の利益目標。それらは本社や経営者が考えることですが、それを実際に実行するのは現場です。
それらを達成するために、やり方を変えてもらったり、それを深く理解したり、その実現に協力してもらうには、現場の人がチームメンバーの賛同・共感を得なければいけません。
つまり、実際の変革は現場でするものであって「変革型ミドル」という言葉があるように、経営者が演説・方針を伝えるだけでは、会社や職場の変革は上手く行きません。
その代弁者となる人がいて、初めてチーム・職場に変化が生まれます。
変革型リーダーシップの4要素(4つのI)
では具体的に賛同・共感を得るために必要な能力4つのIについて説明します。
個別化された影響 Individualized-influence | ビジョン及び使命の意味を提供するプレゼン力 |
モチベーションの鼓舞Inspirational-motivation | 提示したルール・手順・方針・目標の実行への動機付け力 |
知的刺激 Intellectual-stimulation | 必要な経験、知識、思考の幅、能力の付与 |
個人毎のサポート Individual-consideration | メンバーそれぞれに合わせた最適なコーチ・サポート |
Individualized-influence:ビジョンの共有
新しいルールや目標、手順の全ては、誰にとっても「良くわからないもの」です。
本社や経営者が色々考えて「これをやる」と決めたらしいという程度です。
そこから話を深く聞いて理解を深め、実際に試してみて初めて「これは大事だ」とか「前のやり方より良い」という実感の積み重ねによって、自分の思考回路に組み込まれるようになります。
自分と同じレベルで、相手にもそう思ってもらう事が出来て初めてビジョンの共有が出来たという事が出来ます。
変革型リーダーシップ事例①:新しいルールを常識化させる
わかりやすい例で解説します。
建築業界では、安全第一が今では当たり前となっていますが、昔はそうではありませんでした。労災が起き、対策が考えられるたび「それでは作業スピードが落ちて、仕事にならない」と反発する人もいました。
毎日、朝礼で文句を言われてもいい続け、その結果として今では「仕事が速い業者」よりも「危険な行動を取らない真面目な業者」が重要視する事が当たり前になり、危険な行動をとれば、先輩や親方から厳しく怒られるのが当たり前になりました。
変革は人間の頭の中で起きていることであるといえます。
Inspirational-motivation:行動の継続サポート
当たり前ですが、新しいことというのは中々定着しません。なぜなら、それは常識や習慣化されておらず「前のやり方をしても怒られないのだったら、前のやり方でいいや」となってしまいます。
これが組織慣性というものであり、人は慣れた行動を繰り返そうという心理が無意識に働きます。これが新しい取り組みの7割が上手くいかない理由です。
だから、当たり前にできるまで、辛抱強く、注意したり、それをしている人を評価したり、定期的に監視・監督したり、「やっているか確認するぞ」という行動を継続させるためのサポートが必要になります。
変革で一番重要なのは、優れた話術などではなく、定着するまで辛抱強く取り組み続ける根気です。
Intellectual-stimulation:理解してもらえるように話す
自分の経験していないこと、知らないこと、できないことをいくら説明されても、その本質を十分に理解することはできません。
仕事ができる人であれば、ある程度会話すれば「ああ、そういうことね」と理解してもらえますが、能力や経験のない人にさらりとした説明だけでは「はあ・・・」という結果になってしまいます。
理解力というのは、理解するために必要な前提知識や経験が必要になります。
小学生に難しい話をして理解してもらえないように、自分の伝えたい事を理解してもらうために必要な知識、事例を交える事が大切です。
堀江さんとかひろゆきさんは非常に例え話がうまいですよね。
知識がなくてもわかるように工夫をされています。
Individual-consideration:メンバーに合わせたサポート
ほとんどのリーダーや管理職は「私は指示した・指導した。」という行動をしただけで満足してしまいますが、相手が納得していない、賛同していなければ、何もしていないのと同じです。
だからこそ、Aさんは、○○を無意識レベルで考える事ができているな。
「指導しなくてもこれからもずっとその意識をし続けてくれることだろう」
上記の状況になる前に、指示や指導をやめてしまえば、そのメンバーはすぐに元に戻ります。だからこそ、メンバーの性格や能力、知識、立場に合わせたアプローチをしなくてはいけないし、「この人は自分に賛同してくれた」というレベルまで根気よくコミュニケーションし続ける事が変革リーダーの仕事です。
変革リーダー(まとめ役)はアルバイトだってできる
変革型・ビジョナリーリーダーシップと聞くとこれまで偉人を想像されたかもしれません。しかし、変革リーダーは適性さえあればアルバイトでも可能です。
変革型リーダーの役割は共感・納得・賛同さえ得ることだけでいい
変革型リーダーは別にアイデアマンでも、知識や経験がなくても構いません。
変革内容・目標は、管理書や経営者、経験豊富な人に任せればよく、変革型リーダーの役割は、その新しいルールやマニュアル、オペレーション、ミッション、優先順位をメンバーに理解・納得・優先するように説得していくことであるからです。
「○○さん、今こういうことをやっていて、■■するには、○○さんの協力が必要で、僕も困っていて、助けてくださいよー」
上記のように先輩や周りのメンバーが協力したくなる・好かれるキャラの子って必ずいますよね。
その子に自分が伝えたい事を代弁させればいいだけです。
リーダー・マネージャー・管理職のミッションは、自分がリーダーシップを発揮することではなく、メンバーにリーダーシップを発揮させることです。リーダーシップを発揮させるとはどのようなことかに関しては以下の記事で解説しています。
【全然違う】リーダーシップとマネジメントの違い【徹底比較】
またチームパフォーマンスを高めるために必要な役割の種類をそれぞれ解説しています。
【リーダーシップスタイル全11種類】チームに必要な役割とその特徴
まとめ
ほとんどの企業・経営者は、課題発見や改善案を考えることで満足しています。様々な数値を活用し、それらを分析し、評価しています。
社長がマネージャーに指示をし、マネージャーが現場管理職に叱り、現場管理職は社員やアルバイトを叱る。上手くいくか、失敗するかどうかは「たまたま職場に優秀なアルバイトや社員がいた」で決まります。
変革は現場で起きるものです。
相手と話していれば、「ああ、響いてないな」・「多分、自分には関係ないと思っているな」という感触がわかるはずです。
それを理解力がない・聞く気がないとするのではなく、管理職だからなんとかしなくちゃと思うのでもなく、説得や共感させることに潜在適正のあるメンバーを見つけ、そのメンバーに任せればいいだけの話です。
変革をする実行役・司会役のミッションは、伝えて欲しい事を魅力的にプレゼンすること。
これだけです。
これは経営者の仕事ではないし、現場の人間がするべきことです。